フルニ島の沈没船

水中考古学

1986年から放送している「日立 世界ふしぎ発見!」が好きで、いつまでも続いてほしかったけれど、2024年の3月に終了するという。とても残念。毎回欠かさず観ていたわけではないけれど、テーマに興味があるときは楽しませてもらった。

2024年1月20日は、「奇跡はここからはじまった エーゲ海 文明の十字路」というタイトルで、エーゲ海に眠る沈没船の発掘プロジェクトがテーマ。ミステリーハンターは比嘉 バービィさん。

エーゲ海で発見されて考古学史を揺るがしたといわれているのが「アンティキティラ島の機械」。
今から100年以上前に古代ギリシアの沈没船跡から発見されたもので、37個以上の歯車などから成り立ち、天体の動きで暦を計算できる。世界最古のコンピューターといわれている。
刻まれている文字からは、惑星の名前や機械の使い方も判明しているらしい。

番組では、58隻もの沈没船が発見されたギリシアのフルニ島周辺の発掘調査を追いかける。特にNo.15と呼ばれている、15番目に発見された船体を引き揚げるプロジェクトに同行取材する。No.15はビザンツ帝国(395~1453年)の初期のもので、水深50mの砂の中にあると考えられている。砂の中はバクテリアも生存できない無酸素状態で、船体がそのまま残っている可能性があるらしい。

この調査には船舶考古学者の山舩晃太郎(やまふね こうたろう)さんが唯一の日本人として参加している。山舩さんは小さい頃に観た「世界ふしぎ発見!」が考古学者になるきっかけになったと話されていた。
山舩さんは特殊なカメラで現場の3Dマップを作成する「フォトグラメトリ」と呼ばれる水中調査法が得意。世界中の研究機関からひっぱりだこで、一年のほとんどを海外で過ごしている。
山舩さんによると、船体を調べることで当時の技術水準がわかるとのこと。どれだけ木材を理解して、どのようにのこぎりをいれていたか、ということもわかるらしい。

海底にはアンフォラと呼ばれる壺とその破片がたくさんある。アンフォラは商船で商品を輸送するときに入れ物として使われていた壺。その特徴から、作成された時代や中の積み荷もわかるらしい。大きいアンフォラなどの重いものを海中から引きあげる場合、まず対象物を網にいれる。網をバルーンと呼ばれるシートにくくりつけたら、バルーンに気体(空気?酸素?)をいれ、その浮力で海上に引き上げる。

今回引きあげたアンフォラは、クリミアのガルム(様々な魚を内臓と共に発酵させた魚醤)工場遺跡から同じ形のアンフォラが出土していることから、5世紀末の黒海・クリミア半島で作られたものと判明。他にも異なる商品を積んでいた形跡があるので、複数の港を経由してフルニ島の付近にやってきたと推測できる。そして嵐か何かにあって、沈没してしまったのかもしれない。

フルニ島の周りで58隻もの沈没船が見つかったということは、地理的に船が遭難する可能性が高く、かつ古代から船舶が多く行き来していたのかな。船舶の積み荷は、その時代に作られ、消費され、好まれていたものだ。船舶や積み荷がある程度良い保存状態で発見されたら、遺跡や文献と同じくらい歴史的価値はとても高い。すごく夢のある分野で、きっとこの先も大発見が待っているに違いない。

※アイキャッチ画像は、沈没船 No.4の沈没船見学の様子。特別許可をもらいミステリーハンターがダイブ。海底にアンフォラがたくさんあった。

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