田中 孝幸
13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海
東洋経済新報社
「地政学」という文言をタイトルに持つ書籍だけど、分かりやすく、小説としても地政学の本としても、とても面白かった。
カイゾクと呼ばれる男が営むアンティークショップで、高校生の大樹(だいき)と、大樹の妹で中学生の杏(あん)は、カイゾクから地球儀を使っての7日間の講義を受けることになる。中高生に向けてカイゾクが講義してくれたのは、世界史や地理といった垣根を超えた、世界の実態についての講義だった。
カイゾクはふたりに、好奇心と想像力だけあれば、講義の予習は必要ないという。私たち読み手にも同じことがいえるかもしれない。「世界のことをもっとよく知りたい」「なんでこの国ってこうなんだろう」という好奇心や、「この国の人たちはこう考えているのかもしれない」「将来、こんなことが起きたら…」といった想像力が、とても重要だと思う。カイゾクの話を聞く大樹と杏は、この二つのことを大切にしながらカイゾクの話を聞いて、自分が将来何をやりたいかを考え始める。
カイゾクは博学で、講義の内容も勉強になるが、何より人柄が素晴らしい。優しくておだやかでたくましく、周りにこんな大人がいたら、この国はもっといい国になるんじゃないか。自分もカイゾクのいいところを見習いたい。
カイゾクが講義で教えてくれることは、今の日本がいつまでも変わらずにあるのであれば、必ずしも必要ではないかもしれない。しかし、今後の世界がどうなるかわからない21世紀をよりよく生きるためには、とても重要なことだと思う。自分もカイゾクの講義を受けた一生徒として、学びを続けていこうと思う。
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