堤 隆
冒険考古学 失われた世界への時間旅行
新泉社
中学1年生のハヤトは、スマホのアプリで過去へタイムトラベルしてしまう。
過去への旅行は、4万年前、1万年前、5000年前、3000年前の4回。いずれも日本列島のどこか、人々が生活している場所に、ハヤトは運ばれる。
アプリの機能で、行く先々の人たちと会話ができるようになったハヤトは、怪しまれながらも出会った人たちに受け入れてもらい、一緒に狩りをしたり、道具を作ったりして、生活をともにする。
4万年前(旧石器時代)にタイムトラベルしたときに出会った人々は、肉を葉っぱにくるんで加熱していたが、1万年前(縄文時代早期)になると、調理をするのに土器を使うようになっていた。時代が新しくなるにつれ、人々の生活も変化していく。3000年前に出会った人たちは、儀式を行っていたり、隣村との争いがあったりと、だんだん文化的になって、社会性も強くなっていた。
ハヤトが出会った人たちも、今の人達と同じように、日々、苦労したり、悩んだり、楽しんだりして暮らしていた。旧石器時代や縄文時代に生きていた人たちは、現代人と身体的特徴は異なるかもしれないが、知性や感情などはほとんど同じだったに違いない。例えば、ラスコーの壁画は何万年も前に描かれているが、本当にすばらしい絵で、彼らが現代人と同じ心を持っていたように感じる。
ハヤトはタイムトラベルから現代に戻ると、東京都埋蔵文化財センター、大学、浅間縄文ミュージアムなどで、少しずつ考古学のことを勉強していく。
化石など、過去の生物が何年前のものかを判定するのに、「放射性炭素」による年代測定が利用される。しかし、放射性炭素による年代測定には誤差の問題があって、正確には年代を特定できなかった。この問題を解決するのに、日本の湖が関係してくる。
福井県の水月湖(すいげつこ)という湖の底には、過去7万年もの堆積物が層になって残っている。これは「年縞」と呼ばれ、1年に1つ層が増える。この層の放射性炭素を測定することで、過去数万年前の各年の放射性炭素がわかるようになり、今では世界的な基準として使われるようになっている。
また、2万5000年前から1万6000年前は最終氷期最寒冷期といわれ、地球の平均気温は今より7℃~8℃は低く、海面も130mほど低かったらしい。今では、海面が1m上昇するだけで大騒ぎなのに。それほど遠くない過去に起こっていた、地球環境の大きな変化に驚かされる。
この本は、新泉社の「13歳からの考古学」というシリーズの第一弾。第二弾として「なんで洞窟に壁画を描いたの?」という本があるようなので、いつか読んでみたい。
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