アーシュラ・K.ル=グウィン 作、 清水 真砂子 訳
こわれた腕環 ゲド戦記2
岩波少年文庫
ゲド戦記の二作目。前半は、”アチュアンの墓所”と呼ばれる宗教施設と、そこで大巫女の生まれ変わりとして育てられた少女アルハを中心に物語が展開する。
いつまでたってもゲドは登場しないし、暗くて息苦しい印象の話が続く。しかし、墓所の地下に広がる迷宮で、アルハがゲドを見つけたあたりから、物語は大きく動き出す。
前作の「影との戦い」もそうだったが、この本の最大の魅力は、世界観。
まだ二冊しか読んでいないけど、ゲド戦記の世界観の設定は奥が深く、本当にそういう世界があったとしても納得できる説得力があり、読書をしながら世界観に没入するのが楽しい。
また、自然や物事の描写が丁寧で綺麗なところも、楽しみのひとつ。西方の山での旅では、自然の情景に癒された。最後の航海の場面も、自分がゲドの船に乗って風を受けているかのように感じることができる。だから、何度も読みたくなるし、実際に山や海に行って、風の冷たさや星の明るさを確かめたくなる。
アルハは、ゲドに本当の自分の名前がテナーだと教えてもらう。
自分の名前を思い出したテナーは、アチュアンの墓所の大巫女として不自由なまま生きていくのか、アチュアンの墓所を離れて新天地で自由に生きていくのか、葛藤することになる。
未知の世界へ飛び出すのは、誰にとっても不安だ。ゲドは、偽りの世界の呪縛から逃れようとするテナーを励まし、導いていく。
私たちも、時に大きな決断を迫られることがあるが、本当の自分らしい選択ができているのだろうか…。
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