山口周
仕事選びのアートとサイエンス
光文社新書
本書の「はじめに」で著者が述べていますが、一生涯を一つの会社に勤めることは難しい時代になりました。
しないで済むなら無理に転職はしなくてもいいと著者はいいますが、転職せざるを得ない場合はどのような態度で臨めばいいのか、本書はその一助になるはずです。
第一章では現代社会における転職の重要性について、第二章では転職する際に何を基準にすべきか、第三章では如何にいい転職をするか、について書かれていますが、個人的にはこの第三章が好きです。
従来のバックキャスティング型のキャリア戦略(現状の姿とありたい姿とのギャップを埋めようと試みる考え方)にも意味はあると思いますが、それにとって代わろうとしているクランボルツのハプンスタンス・セオリー(いい偶然を高めるために努力すべき)の話は、自分にとっては斬新かつ妙に納得がいく内容でした。
続く第四章では、「攻め」の転職と「逃げ」の転職についての注意点、第五章では転職後の心構えについて書かれています。
いわゆるビジネス書ですが、著者のわかりやすい文章と教養の深さがこの本の魅力だと思います。
転職はなんのためにするのかといえば、究極の目的は「幸せな人生を送るため」だと思います。
P215以降で労働と幸福について書かれていますが、「世の中に確固とした価値を提供している、誰かの役に立っている、必要とされている、感謝されている、という実感をもたらしてくれる労働が幸福感の本質」とあります。
どうせ転職するなら、幸せな人生を送るための労働に結びつくような転職がしたいですね。
※アイキャッチの画像は、本書の表紙にも使われているカラヴァッジョの「聖マタイの召命」を参考にして描きました。「聖マタイの召命」は、収税人として銭勘定に励んでいた男に、イエスが弟子になりなさいと告げた場面を描いた作品です。
